十月圍城 -Bodyguards & Assasins

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台南の旅はまだ途中ではありますが。先週ふらりと見に行った映画が予想以上に面白かったので、感動冷めぬうちに。鉄は熱い内に打て。違うか?


私のチョイスにしてはめずらしく香港製作の映画です。「九月に降る風」に出演していた王柏傑(ワン・ポージェ)くんが出演しているという、そんなミーハーな動機(笑)。ただ、この映画、出演者がやたらめったら豪華。梁家輝(レオン・カーフェイ)、黎明(レオン・ライ)、曹志偉(エリック・ツァン)、謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、甄子丹(ドニー・イェン)、范冰冰(ファン・ビンビン)、きっと私の知らなかったすごい人も。
「投名状(邦題 ウォーロード/男たちの誓い)」のピーター・チェン監督のプロデュース。監督は陳徳森。


辛亥革命前夜、1905年、大陸の革命家たちと会合を持つために孫文が日本から香港へとやってくる。その情報を得た清朝の刺客が孫文を狙う。みんなで孫文を守れ!というストーリー。実話を元に脚本を起こした、とのことですよ。
登場人物は2時間の映画としては多いかと思うのですが、その短い時間の中でもしっかりとそれぞれの人物が描き出されているので、ごちゃごちゃした感じは受けません。革命をめぐってのそれぞれの熱意や葛藤。孫文のガードが始まるまでの前半はそうした人物描写で魅せてくれます。

刺客が清朝の精鋭であるのに対して、護衛する側はほとんどが市井の民。歴史の中では名もなき民として埋もれてしまいそうなその人々の横顔もしっかりと見せてくれます。孫文の謳う革命の理念がわからなくても、自分の愛する主人のために、友人のために、家族のために。大義のためというよりも、その身近な大切な誰かのために命を賭した職に身を投じるのです。
そして、その護衛を依頼する大商人、李玉堂。いよいよ明日がその日となったときに、彼が見せるその複雑な表情。きっと多くの命が失われてしまう、そうとわかっていても大義のためにお願いしなくてはならないっていう胸中がすごく伝わってくる。「謝了」っていう短い言葉の中に、多くの思いがこめられているのがよくわかる。


いざ孫文が上陸し、孫文の護衛が始まると、もう力の差は歴然。圧倒的。やっぱり護衛の方は次々に斃されていく。あっけないほどに。たった1時間の時間を稼ぐために何人もが散っていく。


こうして今の時代、私たちが当たり前に享受している自由や諸権利なんですけれども、かつてはこんな風にその獲得のために、文字通り自らの血を流して、格闘した人々がいて、そういう人々がいたからこそ手にしているものなんですよね。画面の中で倒れていく人々を見て、こう胸が詰まるような思いを抱きました。そして、繰り返しますが、その今は名もない戦った人々にも当たり前のように大切な人がいて、明日の幸せを信じていて……。一つ一つの大切な人生があったんだということ。


また、この舞台になっているのが中国で、辛亥革命の前夜であったということが切なく迫ってくる。彼らのこの犠牲は果たして実を結んだと言えるのか?いつかあの大陸に真の民主主義が根付く日が来るのだろうか……なんて。


ストーリーもよく、人物も魅せるよい映画でした。
そして、ドニー・イェンのアクション!すばらしいの一言。


香港の大作なので、きっと日本でも公開される日が来ることでしょう。派手に宣伝されることはないかもしれませんが、そのときにはお見逃しなく!